☆麻子坑・坑仔巌・老坑などなど……端渓硯の違いって何?

硯の最高峰といえば端渓硯ですね。

おそらく書道を習っている方であれば、一度は「端渓」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。

また、書道にあまり関心の無い方の中にも、その名前を聞いたことのある人がいるかもしれません。

それほど「端渓」という名前は有名なのです。

さて、そんな硯の最高峰とも言われる端渓硯、「いつかは自分も手に入れたい!」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。

そんな気持ちで、書道用品店のガラスケースをのぞいたり、インターネットで検索したりすると、端渓硯という表記のほかに、「麻子坑」「坑仔巌」「老坑」などという表記を見かけませんでしたか?

この「麻子坑」「坑仔巌」「老坑」などという表記が何を意味するのか、馴染みのない方にはわかりにくいかもしれないので、今回はこの「麻子坑」「坑仔巌」「老坑」という表記が意味することについてみていきましょう

≫端渓硯はどこで採石される?

まずは、端渓硯に使用される石が、どこで採石されるのかについて簡単に説明しましょう。

端渓硯に使用される石材は、中国広東省肇慶市を流れる西江という河の近くで採石されます。

この石材は、どこか特定の一カ所、例えばどこかの山の中からだけ採石されるというものではありません。

正確なデータはありませんが、およそ半径15kmほどのエリアの中に、硯となる石を採る場所がいくつも存在しているとお考え下さい。

その採石エリアの中でも代表的なのが、斧柯山と呼ばれる山の辺りです。

≫麻子坑・坑仔巌・老坑は坑道の名前

斧柯山周辺にも、採石に適した坑道は複数存在します。

今回の記事で取り上げた「麻子坑・坑仔巌・老坑」などというのは、この坑道の名前なのです。

端渓硯には1000年を超える歴史があるといわれています。

長い歴史の中で、端渓硯に使用される石を採石する坑道は数多く存在してきたようです。

そんな数ある坑道の中でも、特に優れた石を採石することのできた坑道が、先に挙げた「麻子坑・坑仔巌・老坑」と呼ばれる坑道です。

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≫麻子坑・坑仔巌・老坑の特徴

さて、それでは「麻子坑・坑仔巌・老坑」それぞれについて簡単に見ていきましょう。

麻子坑は、日本でも広く流通している端渓硯の一種です。

麻子というのは、中国語で「痘痕(あばた)」を意味します。

この坑道を発見したのが痘痕顔の人物だったため、麻子坑という名が付けられたといわれています。

坑道の名前とは異なり、見た目の綺麗な石が多く産出されるのが特徴的です。

端渓硯といえば、墨を磨る機能に優れていることはもちろん、見た目にも美しいことで有名です。

麻子坑から採石される石材は、多くの人が一目で「美しい」「端渓硯らしい」と感じるような紋様を備えていることが少なくありません。

墨を磨るための鋒鋩も微細なため、見た目がよく、硯としての性能もよい、数ある端渓硯の中でも優れた石材ということができるでしょう。

坑仔巌も、日本国内で広く流通しています。

坑仔巌から採石される石材は、石質が均一という特徴を備えています。

そのため、どんな墨を磨っても手早く墨汁を得ることができます。

麻子坑から産出された石材には及ばない石が多いものの、見た目も悪くありません。

墨を磨ってたくさん作品を書くという人には、最も適した端渓硯ということができるでしょう。

老坑は、数ある端渓硯の中でも最高と評価される石材が採取される坑道です。

先に説明した2つの石材に比べて、流通量は圧倒的に少ないです。

というのも、坑道が常に水に浸されているため、採石の際は坑道に溜まった水を全て掻き出してから作業をしなければならず、採れる量が他の坑道の石よりも少なかったためです。

昔から皇帝の許可が無ければ坑道を開くことが許されず、勝手に石を持ち出した者は死刑になったとも言われるほど、貴重な石材でした。

墨を磨るための鋒鋩が微細で強靭で、また潤いと深みのある見た目の美しい、端渓の最高峰と称されるのも納得の石材です。

本物の老坑は数が少なく、その値段も他の諸坑道の石材に比べると大変高価です。

≫新麻子坑・新坑仔巌・新老坑にご注意!

すでに見かけた方もいらっしゃるかもしれませんが、「麻子坑・坑仔巌・老坑」に似たものに「新麻子坑・新坑仔巌・新老坑」というものがあります。

「新」の字が頭についているので、新しく採れた麻子坑、新しく入荷した坑仔巌などと勘違いしてしまう人もいるのですが、「麻子坑・坑仔巌・老坑」と「新麻子坑・新坑仔巌・新老坑」は別の石材を使用して製作された硯とお考え下さい。

「麻子坑・坑仔巌・老坑」というのは、古くから定評があり、広く知られている坑道の名前です。

しかしながら、近年では資源保護などの影響で採石が困難になり、昔に比べて流通量も減少しています。

そこで、古くから知られている坑道の名前にあやかって、別の坑道で採取された石材に新○○という名前を付けているようです。

この新○○という石材が、どの地域から採石されているのか詳しいことはわかりません。

いずれにしても、新麻子坑と麻子坑、新坑仔巌新と坑仔巌、新老坑と老坑は別のものであると、しっかり認識しておくことが大切です。

まとめ

☆端渓硯は、中国広東省肇慶市で採石される石材によって作られる

☆「麻子坑・坑仔巌・老坑」は、端渓硯の素材として使用される石が採石される坑道の名前

☆数ある坑道のなかでも「老坑」は最高の評価を得ている

☆「麻子坑・坑仔巌・老坑」と「新麻子坑・新坑仔巌・新老坑」は、まったく別の石材なので注意!

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