墨が磨れない!? 墨の磨れない硯の不思議

墨が磨れない!? 墨の磨れない硯の不思議

記事のタイトルを見て、「?」という字が頭に浮かんだ人も少なくないかと思います。

それも当然です。

なぜなら、「磨れない硯」という表現は、言っていることが矛盾しているように感じるからです。

「そもそも硯は墨を磨るための道具じゃないか」と考えるのは、誠にごもっともなのですが、世の中には墨が磨れない硯もあるのです。

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今回は、そんな硯の中から

■ 宝石でできた硯

■ 鋒鋩の弱くなった硯

■ 新品の硯

の3つを挙げてみましょう。

宝石でできた硯

世の中には宝石でできた硯があります。

具体的には、翡翠などの玉(ギョク)と呼ばれる石や瑪瑙などの石で制作された硯です。

これらの硯は、墨を磨るという目的よりも机上の飾りとする目的のために制作されたものが多いようです。

「そんな硯は見たことが無い」という方は、ぜひ「翡翠 硯」などと検索してみて下さい。大変美しい硯を見ることができますよ。

残念ながら、これらの硯では墨を磨ることのできない可能性が高いです。

というのも、以前も紹介したように、墨を磨るためには鋒鋩という凹凸が必要だからです。

以前の記事はコチラ

☆墨は硯で、なぜ磨れる?|硯で墨を磨る仕組み

「どうして墨は硯で磨ることができるの?」 こんな疑問を投げかけられたら、皆さんはどのように答えるでしょうか。 私はこう答えます。「硯には鋒鋩(ホウボウ)があるか…

基本的に、翡翠などの玉で鋒鋩を作ることは困難です。

墨を磨る部分にだけ別の素材を貼り付けるという方法も考えられますが、美観を損なう可能性があり、手間もかかるため、基本的にそのような加工はされないようです。

だから、宝石でできた硯は、墨を磨ることのできない硯の一つとして挙げることができるでしょう。

鋒鋩の弱くなった硯

墨を磨る目的で製作された硯の中にも、墨を磨ることの困難な硯が存在します。

それは、鋒鋩が極端に弱くなってしまった硯です。

たとえ鋒鋩があっても、鋒鋩が極端に弱くなってしまうと墨を磨ることができなくなります。

同じ硯を何年も使用するうちに、だんだん墨が磨れにくくなったという経験をした方も少なくないでしょう。

硯の中には、墨を磨るたびに鋒鋩が弱くなってしまうものがあります。

それは、使用するごとに墨とともに鋒鋩の方も削れてしまったり、使用後の洗浄が不十分で鋒鋩の間にゴミが溜まってしまったりすることが原因といわれます。

この状況を解消するためには泥砥石や紙ヤスリで、再び鋒鋩を整えてあげなければなりません。

新品の硯

冒頭と同じく、また「?」が思い浮かんだかもしれません。

今度は、「上に書いてある長く使って鋒鋩が弱くなった硯というのはわかるけど、まだ使っていない硯でも墨が磨れないなんて、おかしいじゃないか」という声が聞こえてきそうです。

新品の硯すべてが墨を磨れないわけではありません。

より正確に言うと、「新品の硯のなかでも一部の硯」です。

新品の硯、特に中国から輸入されたものに多いのですが、墨を磨る部分(墨堂)に塗料の塗られていることがあるのです。

制作されたばかりの硯は見栄えが良くありません。

素材となった石にもよりますが、白っぽくカサカサしているように見えることが多いようです。

そんな石に塗料を塗ると、艶やかで潤いのある見た目に変身させることができます

残念ながら、見た目が悪いと商品として売ることが難しくなります。

そのため塗料を塗り、できるだけ良い見た目になるよう工夫するそうです。

ここまでお読みいただければ想像できると思いますが、塗料の塗られた硯で墨は磨れません

なぜでしょう?

そう、墨を磨るために必要な鋒鋩が塗料で埋まってしまうからです。

新品の硯を買ったのに墨がなかなか磨れないという方は、墨堂に塗料が塗られていないか疑ってみましょう。

塗料が塗られている場合でも、先に述べた泥砥石などによって墨堂を研磨することで、墨を磨ることができるようになりますよ。

目的に合った硯選びと硯の基礎知識が大切!

さて、ここまで「墨を磨ることのできない硯」をいくつか挙げてきました。

硯を選ぶ際に大切なのは、自分が硯をどのような目的で使用するのか明確にすることと、硯についての基本的な知識を身に着けておくことです。

鑑賞目的で購入した硯であれば、たとえ墨の磨れない硯でも当初の目的を十分に果たしてくれることでしょう。

また、墨が磨れるのは鋒鋩があるからだということを知っていれば、鋒鋩の弱くなった硯を適切にメンテナンスして使うことができるでしょう。

墨を磨ることができないからといって、必ずしもその硯が悪いものだということにはなりません。

硯に対する使用者の接し方が最も大切なことなのです。

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